がんの3大治療といえば「手術」「抗がん剤」「化学療法」が挙げられますが、がんの新しい治療法の開発は日進月歩で進んでいます。ここでは最も効果が期待されるひとつとして「分子標的治療薬」の紹介を致します。
抗がん剤治療は、血液中に入り全身を巡って体内のがん細胞を攻撃、破壊するので全身的な効果が期待でき、これまでのがん治療の歴史に大変重要な役割を担ってきました。
しかし、今までの抗がん剤は、がん細胞と同様に正常な細胞にもダメージを与え、白血球や血小板、肝臓、腎臓などを傷つけ、強い副作用に苦しめられ、治療が継続できなくなることも少なくありませんでした。
そうした中、ここ数年の最先端医学で注目され出したのが「分子標的治療」です。使用される「分子標的薬」は、がん細胞だけが持つ特徴にターゲットをしぼって攻撃をする薬です。そのため正常な細胞に与えるダメージが少なくて済むことや、 従来の抗がん剤とは異なった薬理作用があります。がん細胞を効率よく攻撃し、がんの再発・転移などにも効果が高く、今後の治療に大きな期待が寄せられています。
従来の抗がん剤は細胞を破壊するように働きますが、「分子標的薬」はがん細胞の増殖を止めるのが主体です。 そのため、分子標的治療だけではがんを完全に取り除くことはできず、従来の抗がん剤や免疫治療と併用していくことで治療を進めていきます。
分子標的治療薬のうちのいくつかは日本でも承認され、使用されています。
ただし、臨床で使われるようになってからの歴史が浅いだけに、慎重に使うべき薬でもあります。今までの治療と同様に大きな病巣には効きにくいということや、使い続けていると効果が薄れていく耐性の問題などもあります。ただ新しいものに飛びついてその薬だけに頼ろうとするのではなく、ほかの治療法にも助けてもらいながら統合的にがんに立ち向かうことが必要でしょう。
商品名:一般名 | 効果が期待されるがんの種類 |
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リツキサン:リツキシマブ | B細胞性非ホジキンリンパ腫、MCL |
ハーセプチン:トラスツズマブ | 乳がん、胃がん |
マイロターグ:ゲムツズマブ | 再発・難治性AML |
グリベック:イマチニブ | CML、GIST、Ph+ALL |
セバリン:イブリツモマブ | B細胞性非ホジキンリンパ腫、MCL |
イレッサ:ゲフィチニブ | 非小細胞肺がん(EGFR遺伝子変異陽性) |
ベルケード:ボルテゾミブ | 多発性骨髄腫、MCL |
アバスチン:ベバシズマブ |
大腸がん、非小細胞肺がん、乳がん、グリオブラストーマ、 腎細胞がん、卵巣がん、悪性神経膠腫 |
アービタックス:セツキシマブ | 大腸がん、頭頸部がん |
タルセバ:エルロチニブ | 非小細胞性肺がん、膵がん |
ビダーザ:アザシチジン | 骨髄異形成症候群 |
ネクサバール:ソラフェニブ | 腎細胞がん、肝細胞がん |
スーテント:スニチニブ | GIST、腎細胞がん、NET |
スプリセル:ダサチニブ | CML、Ph+ALL |
ベクティビックス:パニツムマブ | 大腸がん |
ゾリンザ:ボリノスタット | 皮膚T細胞性リンパ腫 |
タイケルブ:ラパチニブ | 乳がん |
トーリセル:テムシロリムス | 腎細胞がん |
タシグナ:ニロチニブ | CML |
アフィニトール:エベロリムス | 腎細胞がん、SEGA、NET、乳がん腎血管筋脂肪腫 |
ボトリエント:パゾパニブ | 腎細胞がん、軟部腫瘍 |
アルゼラ:オファツムマブ | 慢性リンパ性白血病 |
ランマーク:デノスマブ | 多発性骨髄腫による骨病変及び固形がん骨転移による骨病変、骨関連事象予防、骨巨細胞種 |
ザーコリ:クリゾチニブ | 非小細胞肺がん |
ジャカフィ:ルクソリチニブ | 骨髄線維症 |
インライタ:アキシチニブ | 腎細胞がん |
ポテリジオ:モガリズマブ | 成人T細胞白血病リンパ腫 |
「分子標的治療」は単独での治療より「免疫療法」の併用もお薦めの治療法です。
たとえば、「分子標的治療」副作用として皮疹、発赤、発熱、喘息のようなアレルギー的な症状がありますが、免疫療法を併用する事で、悪玉リンパ球を減少させてこのような症状を抑えたり、リンパ球からインターフェロンの放出が活発になるので、がん細胞の治療に対する耐性獲得を阻止したりと、様々な相乗効果が得られます。
いずれにしましても、これらの治療についてはドクターと一緒に十分な情報を確認し相談の上、検討されることをお勧めいたします。