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自然治癒力を引き出す漢方療法

東洋医学におけるがんの考え方

東洋医学の主要3要素

東洋医学では、人間のからだは「気・血・水」の3要素を中心に成り立っていると考えています。気とは「元気」「やる気」という言葉のとおり、目に見えない生命エネルギーのこと。血は主に血液を、水は血液以外の体液すべてを指します。

気・血・水が過不足なく順調に循環していれば健康であり、逆に3要素のいずれかが不足したり、滞ったりしたときに、不調や病気が起きるとされています。

がんの発症も、気・血・水で説明することができます。例えば気のエネルギーが滞ると、血や水の流れも悪くなり、老廃物や毒素が溜まって活性酸素が発生しやすい状態に。同時に免疫環境も悪化するため、がんを攻撃するNK細胞の活性も低下し、 がんを小さいうちに摘み取ることができなくなってしまいます。その結果、がんを発症するというわけです。

免疫システムを活性化する漢方

免疫環境を活性化する漢方治療  免疫環境を改善するための漢方治療は、次のような順序が基本になります。まず「気の巡り」を改善させ、全身をスムーズに気が循環するようにします。次に血や水の滞りを治す漢方薬を用い、最後に「気を強化する」治療を行います。
 治療の順序は非常に重要です。例えば、気や血、水の流れが悪いまま気を強化する薬を使うのは、がん細胞に栄養を与えてしまうようなもの。効果が出ないどころか、病状が悪化してしまう危険もあります。
 なお、漢方薬の最も重要な働きは、人間が生まれながらにして持っている「自然治癒力」を引き出すこと。そのためにはそれぞれの体質や症状に合った薬を選ぶことがたいせつです。
 また、漢方薬といっても、すべてが体に優しいわけではなく、かなり強い副作用を生じるものもあります。専門知識を持つ医師や薬剤師のアドバイスに従って、正しく服用するようにしてください。
●がん患者さんに処方される漢方の例
気環境の改善 枳実(きじつ)、厚朴(こうぼく)等の生薬を含む処方…エネルギーの流れを促して、腎臓、肝臓、肺、消化器系の免疫力を高める。
血液循環の改善 当帰(とうき)、桃仁(とうじん)、牡丹皮(ぼたんぴ)、大黄(だいおう)等の生薬を含む処方…血液の粘張性を和らげて血液の流れを促す。
附子(ぶし)等の生薬を含む処方…末梢循環を改善し血流を良くする。ただし高血圧や心筋症に注意しなければならない。リンパ球をがん細胞付近に運ぶ。
水環境の改善 猪苓(ちょれい)、茯苓(ぶくりょう)等の生薬を含む処方…水の流れを速やかにしてむくみを解消する。
半夏(はんげ)等の生薬を含む処方…上半身の気の滞りを下におろす。
免疫環境の改善 薬用人参、黄耆(おうぎ)、百朮(ひゃくじゅつ)等の生薬を含む処方…エネルギーを強くする。
十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)等の生薬を含む処方…全身の気や血液の流れを促進する。
人参養栄湯(にんじんようえいとう)等の生薬を含む処方…上半身の衰えを改善する。
補中絵益気(ほちゅうえっきとう)湯等の生薬を含む処方…下半身の衰えを改善する。
副作用の緩和 八味地黄丸(はちみじおうがん)等の生薬を含む処方…抗がん剤による神経障害、手足のしびれを緩和する。
五苓散(ごれいさん)等の生薬を含む処方…抗がん剤によるむくみ、吐き気を緩和する。