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サポートケア 〜がん患者さんとご家族のために〜

ひとつの方法に頼らない統合的医療を

ひとつの方法に頼らない統合的医療を

がんは数ある病気の中でも、とても厄介なもののひとつ。そのため治療も一筋縄ではいきません。 手術や抗がん剤など現代(西洋)医学的な治療はもちろんのこと、その効果を高めるそのほかの治療法も組み合わせて、総合力で挑む必要があります。
  患者さんをサポートする具体的な方法は、免疫療法、漢方、食事、サプリメントなどさまざま。病気の症状や体調に合わせて、適したものを選ぶといいでしょう。

なお、こうした方法の中には、アロマテラピーやマッサージなど家族の手で行うことができるものもあります。最も身近な存在である家族のサポートは、患者さんにとって何よりの励ましになります。ただしがんの患者さんは個人差が大きいため、それぞれに合った方法を選ぶことが大事。避けたほうがいい場合もあります。必ず 医療従事者に相談したうえで、行うようにしてください。

▽アロマセラピー
アロマセラピー

植物から抽出した精油(エッセンシャルオイル)を利用した、芳香療法のこと。

有効成分を体内に取り入れるには、「嗅ぐ」「入浴」「マッサージ」などの方法があります。嗅覚を通して脳に届き、皮膚から浸透した成分は、心と体にさまざまな働きかけをします。

エッセンシャルオイルには多くの種類があり、それぞれに性質が異なります。ご自分が心地よいと感じる香りを選んでください。ただし、中には注意が必要なものもあります。乳がんや子宮がんなど女性ホルモンが関わるがんの治療をしている方は、基本的にエストロゲン様成分を含むクラリセージ、ゼラニウム、ローズ、フェンネルなどは避けたほうがいいでしょう。

おすすめのエッセンシャルオイルは、不眠・不安の解消にはラベンダー、リラックスにはオレンジなどです。(香りの感じ方には個人差がありますから、強く感じられる方は、使用量を通常の半分以下に調節するといいでしょう。)

※使用の際は、医療従事者に相談したうえで、行うようにしてください。

▽入浴
入浴

入浴は、最も手軽なリラックス法のひとつ。熱いお湯は体力を消耗しやすいので、ややぬるめのお湯にゆっくり浸かるといいでしょう。 気分転換を兼ねて、温泉に出かけるのもおススメです。無理のない行程で楽しみましょう。

温泉療法 ***

疲れを癒しながら身体を温める温泉療法は、免疫力を大いに高めて、体力をリカバリーするのには最適な療法だといえます。

中には「玉川温泉」などのように強酸性のラジウム温泉で、がんにも有効とされる湯治場などもありますので、色々と調べてお出かけになるのもよいでしょう。

適度な食事もとれて旅行に出かけられるようなある程度の体力があれば、病院での治療から離れ、家族とのんびりリラックスして過ごし、おいしい食事や自然の空気に触れることで、温泉効果以上のものも期待できるのではないでしょうか。

ただし、術後すぐなど体力が著しく低下しているときに、温泉に入ると逆に体調を崩してしまうことがあります。まずは医師に相談の上、お出かけすることをお勧めします。

●がん患者さんが通う湯治場をいくつかご紹介しましょう
湯治場 泉質 適応症
秋田「玉川温泉」 酸性泉 皮膚病、動脈硬化、神経痛、消化器疾患、リウマチ、小児麻痺、冷え性、疲労回復など
増富ラジウム温泉郷「不老閣」 放射能性、ホウ酸炭酸、
食塩泉類
胃腸・肝臓の慢性諸症状、リウマチ、神経衰弱症、気管支カタル、痛風、動脈硬化症、糖尿病、生殖器諸症状、アトピー、喘息など
母畑温泉「母畑元湯」 単純弱放射線性冷鉱泉 神経痛、打ち身、切り傷、健康増進など
江戸川
「ラジウム温泉保養センター」
人工ラジウム温泉 末梢循環障害の改善、更年期障害など
茨城
「千代田ラドン温泉センター」
人工ラジウム温泉 高血圧、脳卒中、冷え性、疲労回復、不眠症、火傷、糖尿病
東松山「埼玉ラドンセンター」 ラドン温泉、
ゲルマニウム温泉(酸性泉)
各種神経痛、リウマチ、高血圧、肝疾患、腰痛、胆のう炎、自律神経失調症、慢性胃腸病、喘息、糖尿病など
和漢ドクターズスパ 入浴ハーブ ***

ご自宅での入浴には、リラックス効果の高い天然成分の入浴剤などがお勧めです。 漢方認定医が監修した和漢の入浴ハーブなどは、人工的な薬品や成分・香料を使わないので安全で、自然の香りを楽しみながら、芯から身体を温め、免疫を高めるサポートをします。

●入浴剤で利用される漢方のハーブ一例
クチナシ(梔子) 消炎作用や鎮痛作用があるといわれています。
カンゾウ(甘草) 筋肉の緊張をほぐします。
チンピ(陳皮) 血行を良くし、肌を艶やかにします。
枇杷の葉 痛みを鎮めてくれるといわれています。
ハッカ(薄荷) 発汗作用があります。
ショウキョウ(生姜) 末梢の血液循環をよくし体を温かくします。
「むくみ」を防ぐセルフ・ケア ***

がんの術後、再発や転移の予防や治療と同様に、多くの方がリンパ浮腫いわゆる「むくみ」に悩まされています。この「むくみ」は皮下組織や臓器などに体液がたまりすぎて起こる現象ですが、原因は様々です。

ひどい場合は衣服も着られないほど顔や体が腫れて、あまりの苦しさに「がんよりもむくみを取ってほしい」と言う方もいるほどです。 どんどん膨らむ足や体を見かねた家族が医師に「抗がん剤を使っているのだから仕方がない」と言われて諦めている方も多く見られますが、しかし、 術後から気を付けて、初期段階での指導やセルフ・ケアを心がければ急激な悪化は防ぐことが出来ますので、家族と一緒に注意していきましょう。

●むくみを防ぐポイント
患肢を傷つけないよう日頃から観察する
患肢の適度な運動、ストレッチなどを行う
患肢に違和感を覚えたら、直ちに医師に相談する
着衣(下着も)は締め付けないものを選ぶ
室温は、寒過ぎず暑すぎず、やや薄着でもリラックスできる環境をつくる
長時間同じ姿勢をとらない(正座や関節が過度に屈折しないように配慮する)
リンパドレナージ ***

「むくみ」の予防対策として「リンパドレナージ」という浮腫を流していく治療法があります。

まずは、体組成分析で浮腫率や原因をチェックし、全身の6つの主要リンパ節をハンドテクニックでほぐして開門します。 そこから、ハンドと超音波機器を併用して部分ケアを行い、リンパ液の流れを誘導していきます。 膨らんでしまった細胞膜を壊さないよう柔らかくほぐし、溜まったリンパ液を流していくソフトな施術ですので、リラックスして受けられます。

このとき、ホーム・ケアのやり方や栄養面の指導などもしっかり受けて、家族と一緒に「むくみ」に取り組んでいけば、患者さん自身も安心し、免疫力が高まって、がんと闘える力が湧いてくるでしょう。

最近ではリンパドレナージを導入しているエステサロンやマッサージ店が増えてきました。ただ、美容向けとがん患者さん向けの施術方法には違いがあります。 美容向けのリンパドレナージを受けると逆にがんの症状を悪化させてしまう可能性があるのです。主治医などに相談の上、クリニックや専門施設で受けるようにしましょう。